昨日から膝の調子が悪かった。
理由は…まぁ、思い当たる節が幾つかある。
さて、これをどうするか…
長年の経験上、数日を置けば調子も戻るだろう。
そして、長年の経験上…膝の不調が何らかの事由で周囲に知られた場合、放置した事の手痛い叱責を主治医から頂くことになる。
…正直、それはあまり被りたくは無い。
「機会があったら病院に顔を出すか」
故に、病院嫌いの人間はそんな結論を出したのだった
キィ…
ふとした異音を耳に受ける。
背後を歩く女性が気づくはずも無い、些細な違和感。
ただ、それが自分にとっては時に致命に至ることがあるため、昔からこの事には気を使ってきた。
「ちょっと、止まってくれへんか」
「はい」
彼女が足を止めるのと同時。動きが止まる自分…それと、自分を乗せた車椅子
その車輪の外枠となる輪を握り、軽く腕を前後に振るう。思うように車椅子は動き。レバーを動かすと、同様に車輪を回す。
「どうしたのですか?」
「ん〜、なんや変な音がしたんやけど。気のせいかぁ…」
腕の動きに合わせて動く車椅子。先ほどの、不快な…器具の不調を訴えるような音は何処からも漏れない。
無論、長年、この足と生活を共にしてきたとは言え技術的な事にまで詳しいわけではない。こんな確認では知れない不備がおきていることも有る。今ならば、専門の…いつも、整備をしてくれる技師に検査をしてもらうことも出来るし。或いは代わりの車椅子を借りて預けていくことも出来る。
この車椅子は動力を取り入れ、手押し、回転輪の移動だけではなく、電動でレバー操作することも出来る。故に、精密で、定期的なメンテナンスは欠かせず、不調を感じたのなら早めに手立てを講じたほうがいい…幼い頃からそれは当たり前のこと。
万一、家にいるときに車椅子が動かなくなってしまったら…満足に歩くことが出来ない自分は、1人、家に取り残されてしまうから。
…だから
「では、リハビリテーション課に…」
背後の女性が、車椅子に関する設備のある方向へ車椅子を向けようとする
「ああ、ええんよ。気のせいやったと思うわ」
それを制すようにしながら車椅子に座しなおす…背中に立つ女性は、車椅子から手を放すと眼前に回りこみ、心配そうに見上げて…わざわざしゃがみ込んで目線を合わせてきたのだ…自分への心配を言葉にしようとする。
「しかし」
それだけで、嬉しい
「…前は、お家で車椅子が動かへんようになったら、家から出れへんようになってもうから、ちょう怖かったんやけど…今は、お家にシグナム達がおるもんな、動かへんようになってもうたらおぶってな」
今は、昔とは違う。自分を護ると約束してくれた彼女達…その庇護の元でなら、先の不安も怖くは無く
「ハヤテ…」
奇異な縁で結ばれた2人は、かすかに微笑を交し合う。
そのまま、シグナムは無言でハヤテの背後に立つと…車椅子を押す手に力を込め。
「では、シャマルとヴィータにも、注意するよう伝えて置こう」
「ん〜それもなぁ…こないだメンテしてもろたばっかりやのに、変な音がしたなんて言ったら…うちが、太ってもうたみたいに思われてまう」
「……ふふふふ、大丈夫、ハヤテは太ってない…それより、いくらハヤテの料理が美味しいからと言って、最近、ヴィータは食べすぎだな」
「あははは、たくさん食べてくれるんは嬉しいよ」
病院の廊下を話しながら歩むシグナムと。押されるままに車椅子に座すハヤテ。
…それは、幸福な時といえた…
「あ……」
ふと、思い出したことに声が漏れる…どうして忘れてしまっていたのか。ポカンと抜けていた事柄が頭にポカンと飛び込んできた。
「あかん…先生にこれ渡さなあかんのやった」
車椅子の後ろのネットから問診表を引っ張り出すハヤテ…自宅での足の具合の経過を記したものだ。これまでに提出したものと何ら、変わった内容にはなっていないが。律儀なハヤテとしては一度でも渡しそびれるというのが気が引け。
「シグナム、申し訳ないんやけど、戻ってもらってええかな」
「それを、渡すだけでいいのか?…だったら私が行ってこよう。ハヤテはここで少し待っていてもらえるか」
ハヤテの担当医が居る病棟は病院に入って階段を上ってすぐにある、車椅子のハヤテはエレベーターでしか上がれず遠回りになるが。自分ひとりならばそれこそ数分で済む
…加えて。担当医からハヤテに直接言いにくいことを、保護者代わりであるシグナムは稀に聞かされている。
普段はシャマルやヴィータが同行するため、彼女達にハヤテを任せて聞く時間を作っていたが。生憎と今日は2人。ハヤテを1人置かねばならず
「ええんか?何や悪いなぁ」
…病院の前の、坂になっているロータリーの端。花壇の前の日当たりの良い場所でハヤテの車椅子を止めるシグナム。
「すぐすむ、少し待っていてくれ」
わぁと、花々を覗き込むハヤテを待たせ。病院へと再び足を踏み入れる。
それはただ、それだけのことで…
「綺麗やなぁ」
キィ…
身を乗り出したハヤテの背中が、背後にずれる…
感じたのは悪寒。迷わずブレーキになるボタンを押すが…車椅子は。何かに引かれるように背後へと滑り出す。
ハヤテが居たのは少し坂になっている路面…その坂を下るように背後へ。けれど、重力だけとは思えない速さで下へ…
「え?…何や!?」
車椅子のスロットルレバーを握り、前に倒す…電動で前に進むはずのそれは。けれど何の反応も示さず。
「れ、レバーが壊れとるんか?」
…車椅子は、背後に向けてその車輪をゆっくりと回転させる。
事故防止のため、速度自体はそう出るものではないが…坂道を下る助走としては、その動力は充分で。
「し、シグナ」
…護ってくれる騎士に助けを求めても、彼女は今、傍には居ない。
周囲に人気も無く、少し離れたところに通院らしき二人連れの姿が見えるだけ…車輪は手で止めようとしても。子供の細腕で支えきれず。
…不運の連鎖は止まることなく、背後から病院に車が入ってくる。
言っては何だが、周囲への迷惑を顧みない速度での運転…上り坂に差し掛かりアクセルを踏み込む車と。下り坂を背中向きで滑り始めた車椅子。
「や…止まっ…」
それは、ハヤテに考えたくも無い痛みを予見させ。
「お師匠、あの子!」
身体が。大きな衝撃に震えた。
病院の入り口が随分な騒ぎになっている…人目が集まり。ひそひそと、不安げに言葉を交し合う人の群れ。
僅か数分の間…問診表を渡し。ハヤテには聞かせられない、少し気が滅入る現状を医師から聞かされた…その間に。その場の雰囲気は一変していた。
何があったのか。ただ…ただならぬことではあるようだ。その視線は院外の、花壇のほうに向けられ…
「ハヤテ!」
人ごみの中に飛び込んで車椅子の少女の姿を探す。
…シグナムが車椅子を止めた場所に、少女の姿は無く…下り坂の少し先。そこに…バンパーを少しへこませた車と
…その前で横たわる、車椅子…
ドクンと、一つ鼓動が鳴った…
「ハヤテ!」
車椅子の前に飛び込み。椅子を覗き込む…カラカラと、回り続ける車輪、へこんだフレーム…けれど、ハヤテの姿は無い。
「ハヤ」
「シグナム、こっちや」
その声に、悲痛なほどの安堵を感じる。道路の横の歩道の…さらに奥の花壇から漏れる声…そこに、青年に抱きかかえられたハヤテが、蒼白な顔で笑っていた。
「お師匠、大丈夫です?」
シグナムの横から、ハヤテのほうに声がかけられる…正確には、ハヤテを抱きすくめる青年に向けてだろうが
「あぁ、この子に怪我は無いようだ…」
ハヤテを…まだ腕の中に抱いている青年。抱きしめているというよりは腿の上にハヤテを乗せている、ハヤテが立ち上がればすぐにも離れられるのだろが。動転した様子のハヤテはシグナムと、車椅子と、車と青年をきょときょとと見回し
「いや、師匠…その子助けるとき、おもっきり車、蹴ったでしょが…足、大丈夫です?」
…青年に近づきながら話しかける少女の言葉に。事情を察することが出来てくる。
車椅子は車とぶつかった…だから、車椅子は横転し。ハヤテが怪我をした様子が無いのは。ぶつかる直前…もしくは、直後に青年がハヤテを庇って花壇に飛び込んだから…
安堵の気持ちを自責の念が塗り替えていく。
ハヤテは無事…けどそれは、護られたから…騎士である自分にではなく。見知らぬ誰かに。
「……問題ない」
仏頂面…自分が言うのもなんだが。ともかく、強い感情を示すことなくハヤテを立たせようとする青年。けれど、ハヤテの足に力は入らず…
「あぁ、大丈夫か?痛いとこ、あらへんか?」
少女がハヤテの身体のあちこちを調べている。怪我の有無を確認しているようで…後ろから見ていても、目立った怪我は勿論、花壇に飛び込んだ様子なのだが泥汚れもほとんど無い。青年に、完全に護られたようで…
立ち上がれないで居る様子のハヤテに、少女の傍らから手を差し伸べる。
「私が…」
「シグナム…」
突然の欄入者。それも、ハヤテが名を読んでくれたおかげで関係者だと分かってくれたようだ、青年がハヤテを差し出すようにしてくる。
青年から、ハヤテを受け取る…細い身体は。まだ細かく震えている。
それほどの恐怖を味あわせてしまった…思わず、その身を抱きしめる。
「すまない、ハヤテ…私が離れたばかりに」
「だ、大丈夫やシグナム。こんお人が助けてくれたから怪我ないし」
花壇に座り込んだままで、土に汚れたズボンを払う青年…周りからは、賞賛のような視線を向けられているが、表情を変える気配は無く…ただ、手を膝に添えて顔をしかめた。
ハヤテの背と膝裏に手を回して抱きかかえながら、改めて、青年に向き直る
「ハヤテを助けていただき、ありがとうございました」
謝辞と共に頭を下げる…伏すと言う行為は、騎士にとって並々ならぬ覚悟が居るものだが、この世界のこの国において頭を下げるというのは礼を述べる際の当たり前の行為。まして、主の危機を救われたと有れば、下げぬわけは無く。
「大したことはしていませんよ、ただ…危ないと思っただけで」
…青年の姿には、少し感嘆する。
服を汚し、腕に擦り傷を作り、足も痛めたようだ…けれど、自分の腕の中のハヤテには傷一つ見られない。自分の身よりも優先して、ハヤテを護った証拠…
「それでも、ありがとうございました」
「あ、ありがとうございます」
腕の中からハヤテがあわてたように礼を述べる。震えも収まっている…ようやく、落ち着けたのだろうか。
「で、お師匠のほうは怪我とかはどうです?ものごっついスピードで飛び込んできましたけど…あれって、膝、痛める技と違います?」
「む……」
ほんの、数分前の出来事。
それは、聴覚の端に飛び込んできた少女の悲痛な叫び…の、ような物
実際には、声など。それもあんなか細い声、聞こえる距離ではなかった…ただ、妙な動きをする車椅子に眼をやったら。それに座す少女が恐怖に脅え。車と接触しようとしていた…
走っても間に合わない距離。見ているだけしか出来ない光景。
だから、叫んだ
「お師匠」
どんなときでも、何とかしてくれる人に
「あの子」
言い終えたときには、もう、視界には見慣れた背中があった。
真っ直ぐに、跳び込んで行く。迷わず、怯まず、考えもせず。
ようやく、自分が走り出す体勢になったころにはその背中は、瞬間的に出せる最高速に達し、車椅子と車がぶつかる直前。車椅子から少女を拾い上げ…車椅子と車に挟まれるような位置から。車自体に蹴りを放ってさらに跳んだ…
そのまま、少女を抱きしめながら背中から花壇に落ちていったその姿は、やはり、尊敬に値する姿だった…
「痛みは無い、大丈夫そうだ」
「けれどその膝は…」
大丈夫と言い切る青年に、思わず声をかける…青年にすれば、隠したいことなのかもしれないが…怪我をしたのだとすれば。それはハヤテを助けるために負った傷。
「お師匠は左膝に古傷持ってますんで、それは…そ言えば、さっき車を蹴飛ばした足も、左足や無かったですか?」
…痛めた足で、無茶をしたのだろう。連れの少女に鋭い眼光ですくめられる青年は、ゆっくりと目を逸らし
「他に、方法が思いつかなかったからな」
「っとに…お師匠は…まぁ、こん子助けられたんやからいいんですけど」
「あ、そんな…うちのせいで…ごめんなさい」
泣き出しそうなほどに蒼白になるハヤテ…怪我を押してまで助けてくれた青年は、なんでも無いとばかりに目を逸らし
「ああ、ええんですよ、膝を惜しんで助けられなかったほうが、お師匠にはきっついでしょうから」
快活に笑う少女。ハヤテや…自分、また車も。責める様子は微塵も感じられない。それは青年も同じ様子
青年にとって危険に晒されたハヤテを助けることは当たり前で。それは連れの少女にしても当たり前の事…大した徳を持っているようだ。
「さて、そんじゃ、フィリス先生にお師匠の膝、診てもらいに行きましょう」
「む…」
「大丈夫です、子供を助けるために無茶した言うんは、うちからもよう説明します。んで、一昨日の内緒で猛特訓のことは黙っときます。頑張ったお師匠にうちからの心配りですわ」
「そうしてくれると…助かる」
ちらりと、少女も青年も、一度ハヤテのほうを見て…大事無い姿を確認すると、笑みを交し合う…
危なかったから助けた、其れだけの事、気にすることは無い。
言ってしまうのは容易くとも、こうも体現する姿は、自身がまったく気にしていない姿は、見ていて気持ちよく
「あ、一応。ええと…ハヤテ、さんですか?…も、見てもらったほうがええと思いますんで」
「あ…あぁ、重ね重ね、申し訳ない」
腕の中のハヤテ、見た目には何の問題も見受けられないが…元々、重い障害を背負った身、どんな僅かな干渉がそれを悪化させるとも限らない。
「うちは、大丈夫やと思うんやけどな」
腕の中で自分の身体をぺたぺたと触るハヤテ、この身を据える、代わりの車椅子も手配しなければならない。
「ほら、お師匠」
青年のほうでも、少女が青年に手をさし伸ばして花壇から出そうとしている…未だに座り込んだままの青年は、諦めたように立ち上がろうとして…
「っ…」
左膝に力が入らないのか、そのまま少女の肩を掴むようにして体重をかける
「あわわわわ、お、お師匠…重い」
「む、すまん」
再び、左膝を投げ出すようにしながら花壇に座り込む…表情に大きな変動は無いが、僅かな動きだけで汗をかいた様子で
「お、お師匠…実は結構、膝、やばかったりしません?」
「………」
無言は肯定の証だろう、さすがに少し困った様子で青年は膝を撫で。
「うちが、肩貸しますんで、とりあえずフィリス先生のとこへ」
花壇に分け入る少女が青年の左手の下に身を入れて支えようとする、が…青年が体重を預けようとすると、目に見えて少女も倒れそうになる。
細身に見えるが、青年はかなりの筋肉に覆われている。対し、少女は華奢な体躯に見合っただけの筋力しかないようだ。青年を支えるのは無理そうで。
「ハヤテ、私の背に捕まることはできるか?」
「え?…」
疑問符のハヤテの身体を背中に回して、ハヤテの腕が自分の首にしがみつくようにする…おんぶの体勢だが、足を動かせないハヤテは本当に腕の力だけでしがみつかねばならず、この後のことを考えると…自分が手を貸すことも出来ない
「こ、こう?」
「あぁ…申し訳ないが、少しの間、頑張ってくれ」
再び、ハヤテを花壇に1人待たせると言う選択肢は…あり得ない、今は、主から片時も離れる事が不安で
「失礼する」
青年との間合いを詰め、青年の膝裏と背に…先ほどハヤテにしたように腕を差し伸べる。
意図を察してか、青年は腕から逃げようとするが…逃げられるよりも一瞬早く、青年を捕まえた。
「うおお」
少女が横から驚いた声を上げているが。青年は存外落ち着いた…と言うか、諦めた様子で。
「…手伝ってもらって、言うのも申し訳ないが…この体勢には不満がある」
腕の中で不平をもらす青年
…あえて言うことも無いが、今、自分に、この世界で『お姫様抱っこ』の通称で表される抱かれ方をしているのが不満なのだろう。
「ハヤテと位置を変わってもらっても、私は一向に構いませんが」
むしろ、腕の力だけで首に捕まるのなら、青年のほうが向いていそうだ…そうしようかと、真剣に悩み
…青年は逃れようと身をよじろうとする。
…そのまま立っていてもハヤテが疲れるだけなので、さっさと移動を開始する。
少女は、青年の姿をまじまじと見ながら…笑いをこらえている様子で。
「ありがとうございます、良かったですなぁ、お師匠、楽に移動できそうで」
いや、こらえきれずに笑っている…
自分自身は、長身の部類に入るが筋肉はあまりついていないように見られる…騎士であることを隠しての普通の生活の姿だ、目立つような容姿では困る。
青年は、長身と言うわけではないが、かなりしっかりした体つきをしている。そんな男性を女が抱えていると言うのは、かなり滑稽な姿に見られるだろう。
「……重いでしょう、肩を貸していただけるだけでもありがたいのですが」
奇異の視線を向けられているからか、抱き上げられることを拒む青年…それを無視しながら
「とりあえず、外科の窓口でいいだろうか」
「いえ、お師匠の担当医が病棟に研究室を持ってはるんで、そっちに」
青年への問いかけに少女が答える…指差すほうに足を向けると歩を進め。無理やり腕から逃げようとした青年をしっかりと捕まえなおす。
体術の心得があるのだろう、膝に負担をかけないように、こちらに危害を加えないようにしながら身を乗り出して離れようとした…が、純粋に腕力が違う、騎士として生きてきた自分には、人並みを外れた膂力があり。
…すぐに、力の差を理解したのか青年が抵抗を諦める。逆に、興味をもたれたようだ。
「これでも、力には自信があるほうだ、軽いものだから気にしないでくれていい」
「…剣、ですか?」
ふと、呟く青年…見入る視線は、一端の武人のものだ
「良く分かるな」
「先ほどの踏み込みと…後は、同門の勘という奴です」
青年自身、剣を得物とする技を修めているということだ。そうなると…青年は、自分を押さえ込んだ私の技量に興味があるようだ。
強者への対抗心は、武を修める者にとってけして、避けては通れない欲。
「…それでですね」
…けれど、やはり青年には、今は欲よりも優先する感情があるようで。
「武人として、このような体勢で往来を闊歩することは恥ずべきなんで…」
「あ、基本的にいっつも、こんなこと言って無茶するお人ですから、気にせんといてください、今は恥よりも、お師匠の膝のほうが大切ですから」
青年の言葉を遮るように、うんうんと、頷く少女…明らかに、楽しんでいる様子だ。
ただ、ハヤテの恩人に恥をかかせ続ける事も気が引ける。青年が武人であれば恥は恥辱…やはり、肩を貸すだけで…
「恭也…君?」
…青年の顔色が目に見えて強張った…
「あ、フィリスさん、こんにちはです」
「あ、うん。レンちゃん、今日は検査の日だったかしら」
「はい、そうです」
見れば、少女が白衣の娘と話している…娘は何度か見かけた顔。幼くも見えるが、間違いなく、この病院の医師で、確か…
「フィリス先生」
「あら…八神さん、よね…車椅子は…」
ハヤテとも知己の中の様子だ…けれど、その視線は少女やハヤテと話しながらもずっと、ひとところを注視し続けている
「あ、色々あって。壊れてもうたんです」
「そう…で…」
車椅子の件も、あっさり流される
…じっと、それこそ穴が開きそうなほど。娘…フィリスは、珍しいものを見つめ
「何・・・してるの?恭也君」
バツの悪い顔をしていた恭也は、とりあえず溜息で答えた